書評:虐殺器官考(ごめん、長くなったわ。)


SFにあまり詳しくない、といいますか、ど素人。

SF的なある種の哲学とか詳しくないので
(と、予防線を張るわけではないのですが)
マジギレされても困るんですが。

虐殺器官の面白さって何だったろう・・・?という考察です。

まず、
1・ネーミングの面白さ、
きかん=機関もしくは期間という変換ありきと思うのですが
”臓器の器官”(消化器官とかありますよね・・)に
なぞらえることで
ラップ的”韻を踏む楽しさ”があるのでは・・・がまず一つ。

2つ目は詰め込まれる男の子なら
つい反応してしまう特殊部隊というネタ。
それらに付随するガジェットの構築度の高さが
危険水域に達している事の嬉しさ。

3つ目は映画やTV、ドキュメンタリーの元ネタ探しの楽しさ、
「あー・・・元ネタはこれだなきっと・・・」と推測する楽しさ。

4つ目は隠しキャラよろしくリボルバー・オセロット
がいる点ですでにメタルギアオマージュとでも言いましょうか・・・
・・・思わずニヤリ。

5二段階オチといいますか、
標的の動機とラストのオチで二回「う〜ん。この手があったか」的な笑いがこみあげて
きて、ある種の「星新一」的ジョークが炸裂(個人的な感想です)。
感慨があるラストでした。

まぁ、その他としては臓器的な脳の機能のSF的な解釈といいますか、
「近未来」表現が楽しかったりとか、
虐殺のコードの書き方それ自体は文中でそんなに詳しく触れてはいないのですが、
「多分、こういう事だろう」と想像する”余地”を空けておいてくれたのではないか?
という好意的解釈で問題ないのです。ワタクシ的には。




というか「虐殺のコード」の秘密は・・・


(ここから私的解釈の解説があります。未読の方は読まない方が
原作を楽しめると思いますので、引き返して下さい・・・あしからず)










まぁ、結論からいいますと
NHKドキュメンタリーでやっていた(後に書籍化)
「戦争広告代理店」読めって話にある意味で集約されるオチだと
解釈して良いのではと思いますけど。

某SF賞を受賞出来ない理由の一つに
「”虐殺の生成”についての言及が無い」点が
マイナスに作用した、なる一文が発見できたのですけど・・・
いや、分かります。

確かに文中での説明は不足しています。
そこははっきり”小説としては”
(駄目な部分で)評価出来ないポイントなのでしょう・・・

が。

小説を読んでいる「ワタクシ」達、多分大多数の読者が
”有形無形にかかわらず意識している”
「”現実の虐殺コードの生成”の瞬間に立ち会っていた」
という事実が、
この評論者&選者に届いていないというある種の
”もどかしさ”を感じてやまないのです。

近年ではイラクでの”大量破壊兵器問題”は
「虐殺のコード」書かれましたよね・・・
クラスター爆弾と烈火ウラン弾で焼き尽くされた国・・・
後に”大量破壊兵器”は無い事が判明しましたが
米国の公式謝罪(国家賠償含む)はありません。



選者と読者、どちらも悪くないんですよ・・・。



どちらも間違えていて
どちらも正解している・・・


そんなモヤモヤが残る奇妙な読書体験。

面白い本に出会えました。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

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